きのこの山とたけのこの里と私

とある大陸に隣り合う小国が二つ、山頂に構えるきのこの山王国、里に構えるたけのこの里王国。両国は長い間争ってきた。すでになぜ争っていたのか、誰もわからないほど昔から争っていた。

ある年、たけのこの里にはとても美しい姫が産まれた。その噂は敵国であるきのこの山にも噂となって伝わるほどであった。きのこの山にもまた、歴代もっとも美男子と呼ばれる王子がいた。両国は依然として争っていたが、王子と姫は理由のわからない争いを続けることに疑問を感じていた。

ある時、きのこの山の王子は狩りの獲物を追っているうちに、麓まで下りてしまい、気が付かぬうちにたけのこの里の領内へと入り込んでいた。両国は争い状態にあったが、ここ最近は大きな戦争などは起こっておらず、平和な日であった。しかし、もし領地を侵したことが誰かに知れれば、また火種へと発展する恐れがある。王子は一刻も早く立ち去ろうとした。その時、背後より呼び止める声がした。王子は振り向き思わず息を飲んだ。一目でわかった。その人がたけのこの里の姫であると。

もともと争いに疑問を持っていた二人であり、この出会いをきっかけに仲を深めていく。しかし、もしこのことが両国に知れたら、当人たちも無事では済まない。今は無駄な争いによる消耗を避けるべきという穏健派が大勢を占めているが、このことをきっかけに変わってしまう恐れがある。二人は慎重に慎重を重ね、会う回数も月に1回程度にしていた。

しかし、ある晩ついにたけのこの里に来ていた王子が兵士に見つかってしまった。王子は捕らえられ、解放を条件にきのこの山に様々な条件を突きつけた。きのこの山はこれを当然拒否。ついに戦争へと発展してしまった。

戦争ではもちろんたけのこの里の圧勝。きのこの山は滅ぼされ、めでたく姫は女王としてその土地を統治し、その後幸せな暮らしを手に入れた。

だって僕はたけのこの里派だから。